あくまで、個人の考えであって、大学の見解ではありません。
すべての文末に「と思う」などがあり、それが省略されていると考えてください。
絶対的に適用できる方法論でもありません。

文責 小林健一郎



数学と不幸な出会いをしてほしくない。
そのための支援をしたい。
そのための算数支援。


もともと子供は勉強(算数を含む)が好き。
嫌いになる前に、できる限り基礎体力をつけさせ、また好きでいる期間を長続きさせたい。


「算数・数学がわからない」・・・

  本当は 「忘れた」
      「興味がない」 が多い。


「わからない」と思うと、どんどん離れていく。



「忘れた」とならないためにすること。
  覚えてもらうしかない。ただし、「詰め込み教育」はたいてい無理だと思う。
   覚えることを否定しない。 ×「そんなの覚えても無駄だよ」
   覚えていることをほめる。 ○「そんなこと知ってるんだ。すごいね」
   可能な限り覚えた知識を活用させる。(強制やテストにならないように。)

「興味がない」となる前に、興味を持たせたい。
  親・祖父母が関心を持つ。
  算数の成績に感心を持つのではなく算数自体に関心を持つ。
   ×「お母さんは算数きらい」×「大人になったら役に立たないけどね」
   ×「つらくてもがんばれ」(←言いがち(?)だが、これは「算数はつらいよ」宣言。)
   △「あとは自分でやってね」(←状況によっては「自分には興味がない」宣言。)
   ○「こんなに難しいことがわかるなんてすごいね」

  知識が興味の源泉になることも多い。
  「沖縄ではサトウキビが取れる」と言われて、沖縄や砂糖を知らなければ
  興味はわかない(わきにくい)。これは算数・数学でも同じ。

  「テストで良い点を取ったという経験」が興味の源泉になることもある。
  小学校低学年のテストで良い点を取ってもらうのもよい。



算数の敵「忘れた」と「不安」。
  どちらの解消にも「練習」しかない。
  
  ただし、苦行としてではなく。
  見慣れること。やり慣れること。
  指導・支援のモデルは「お母さんの赤ちゃんへの語り掛け」。

基本能力を身に付けさせる支援をする。
  できる限り、「勉強(仕事とか苦行としての勉強)」と思わないうちに。
  親が協力できるのは、反抗期が来る前。


子供時代に養える・養うべき算数(数学)に必要な能力

 ・基本的な言語能力
 ・基本的な計算力
 ・図形や空間の把握


ただし、子供は親の思った通りには動かない。
だから、やってみてなじまなければ、別の方法を。



基本的な言語能力
  ・話をさせ、話を聞いてあげる。
    算数に限らず、「親や祖父母との楽しい会話」は生きていくための宝だと思う。
    そっちの方が算数よりずっと重要だと思うが、算数の観点からも重要。


   「学校で○○ちゃんが△△して、□□だった」をちゃんと聞く。
    尋問・取り調べにならないように。
    親が安易にまとめないように。
    ×(早い段階で)「言いたいことは伝わったよ」「つまりこういうことだね」
    考えさせること、ちゃんと説明させることが重要。

  ・読み聞かせと音読。
    「勉強もの」でなくてよい。

    
    かいけつゾロリ 原ゆたか

    たとえば、物語の筋を忘れたフリをする。
    ○「えーと、桃太郎は何から生まれたんだっけ?」

  ・「まとめ」と「例」(抽象と具体)。
    ○「桃太郎ってどんな話だっけ?」
    ○「動物の家来がいたんだ。たとえば?」


基本的な計算力
 ・数えるのが基本。
   たとえば、お風呂で数えるとか。
   
   画像:いらすとや さん

   1から10まで、あるいは100まで。あるいは、もっとたくさん。
   (「ずっと湯船で」という意味ではありません。それは危険です。)
   あるいは、その逆。すらすら言えることが重要。

 ・おはじきや碁石の利用。
  (小さいお子様の場合、誤飲しないよう十分気をつけてあげてください。)
   並べたり、分けたり、合わせたり。
   

   ソロバンも良いかも。

 ・ゲームの点数計算。
   子供に頼る。
   ○「点数計算はやってよ。お願い」
   

 ・点数付きのカードゲーム。

 ・おやつの分け方。
   「ピザを4人で食べるなら一人何切れずつ?」
   

   「串団子3本を4人に分けるには?」
   

 ・暗算。
   最近の学校では暗算が否定される傾向?
   私は「子供には暗算をさせてほしい」と声を大にして言いたい。

 ・ドリル。
   まじめに取り組めば楽しい。
   100マス計算。
  (ただし、100マス計算はかなり難しい。毎日2回、8週間。
   たまにやるのは絶対にお勧めしない。怒る・逃亡するなどとなる可能性大。
   男の子は「競争」ではいっていけるかも。)
  計算間違いを繰り返す時期がある(かもしれない)。これは辛抱だと思う。

図形や空間の把握
 ・おもちゃ。
  低学年ならレゴやその類似品。

  ラングスジャパン(RANGS) スイッチピッチ PB
  
   

          四面体の点と面が入れ替わっている。


  製造元・名称不明(縁日で買ったものです)
  
       

          広げると八面体と六面体が入っている。

 ・三角錐や立方体の線画。
  

 ・紙・定規・コンパス(+ハサミ・セロテープ)。
   

      正六角形    
   


      立方体    
   


      正四面体
   
  
   


  ・ちょっと面白い話

     三角形の角を切って並べると必ず平らになる(三角形の内角の和は180°)    
   



     メビウスの帯(表裏がない帯、4次元への入り口?)   
   


     NHK 0655より(トーラスの切り開き)   
   

  
   



[おまけ:頭の訓練全般に良いと思うもの]
  人と対戦する(電子でない)ゲーム全般。
    (もちろん、なんでも「やりすぎ」は良くないと思う。)
    小さい時は、マルバツ。
    
       
    (マルバツはほぼ先手必勝。その仕組みを見つけられれば素晴らしい。
     大人も少し本気でやってみる(本気で負かすのではなく)と良いと思う。)
    「石を取っていって最後の石を取ったら負け」というゲーム。
    オセロ、将棋、トランプなど。
    手品。楽器?
    ダジャレ、オヤジギャグ。
    クイズ(「 1 + 1 = いくつ? 答は田」のような遊び)。
    
    (子供用のダジャレやクイズの本をこっそり買っておいてそこから出題する、とか。)

  あくまで個人的なお勧めテレビ
    0655
    大科学実験  http://www.nhk.or.jp/rika/daijikken/
    (他者を笑いものにしない)落語、漫才、コント。



算数の教科書は(読んでみると)おもしろいと思う。

   三角形の面積 = (底辺 × 高さ)÷ 2

リズムをつけて「テーヘン カケル タカサ ワル 二」は楽しかった。
理由を説明する絵も楽しい。
    
    同じものをひっくり返して合わせて、切り取ってつなげる。
    すると、長方形ができる!



少し高級(高学年)なこと。(中学以降への大きなポイントだと思うこと。)
 ・分数に慣れること。
  ただし、分数の公式の意味を無理にわからせようとしない方がよいと思う。

 ・比。
  ケーキの切り方。
   「お父さんは40歳でおまえは10歳だから、お父さんはおまえの4倍だな」
   「だからケーキを4倍食べても良い?」(体重でやってもよい。)
  速さ。
   「10分で2キロ進んだ。あと5分で何キロ進むかな?」

 ・場合の数。



付録:勉強に関して思うこと。
・勉強すれば必ず成績が上がる。
  正直に言って、成績は重要だと思う。
  「勉強→成績アップ」の時間は小学生では短く、高校生では長い。
  (私の印象では、小学校低学年なら30分。高校生なら3カ月。
   高校生にとっての3カ月は、多くの人にとってとてもとても長い。
   だから、小学生くらいで「得意になってもらう」方が楽だと思う。
   ただし、高校生でも遅くはない。)
・「勉強のように見えるもの(実際は勉強ではない)」に注意。
  その判定基準は頭を使っているかどうか。
  だから、本人にしか判定できない。
  頭を使っていないのに「使っている」と誤解させないように。
・勉強の基本は学校。
  子供の前で先生を否定しないでほしい。
  大人は嫌いな人からも知識を得ることができる(立派な大人なら)。
  しかし、子供は、先生を嫌いになったら、算数でもなんでも先生の言うことを
  聞なくなると思う。
・子供は粘土細工やプラモデルではない。
  上で言語能力や計算力などと書いたが、「子供に○○力を付けさせる」と
  細かく指定していくことに意味はないと思う。
  子供はプラモデルではないから。
・子供にゼンマイはない。
  「言い聞かせる」とか「興味を持たせる」という事を否定はしない。
  しかし、それで子供がずっと思った通りに動くと思うのは不遜だと思う。
・「ほめて育てる」でもずっとほめてはいられない。
  ほめっぱなしというわけにはいかない。
・勉強はつきつめれば「勉強(学問)自体」をどう思うかが重要。
  ご褒美や罰、「楽しげな絵」や「やる気を出させるもの」にそれほど意味はない。
  ただし、勉強を教える、勉強を語り合うの存在は重要。



参考文献(算数に限らず)
(以下、参考になったものですが、どれも「全面的に賛成」ということではありません。
 逆に言えば、全面的に賛成でなくとも、極めて参考になると思った書籍です。)

・学習全般
「親力」で決まる ! 子供を伸ばすために親にできること 親野智可等
  「親力で決まる」と言われると、「おお・・・」と思いますが、
  そんなに無茶振りはないかと思います。
  小学生の学習全般に関してとても良いことが書いてあります。
学力は家庭で伸びる 陰山英男
  批判もあるようですが、陰山メソッドはとても参考になりました。
見える学力、見えない学力 岸本裕史
  一部でバイブル扱いされるのもうなずけます。
  ただし、「昭和時代ならともかく今は実現不可能では?」ということも多いかと。
(上記三人の先生方が語ることは、それほど違っていないように思います。)

・その他
小学生のための読解力をつける魔法の本棚 中島克治
  麻布学園の先生が書いた学習案内・読書案内。
  優秀な先生だからできることで、普通のご家庭で実行するのは相当難しいと思います。
  しかし、大変おもしろいです。
数学する遺伝子  キース・デブリン
  全部読めていない(読むのがいろいろ難しい本でもある)のですが、
  「数学の能力」は「言葉の能力」ということが書いてあって、目からウロコが
  落ちる思いでした。